伝統織物いろいろ

こちらでは、伝統織物に見られる特徴についてご紹介致します。
伝統織物には、私達が日常触れている布製品には見かけないような、造作の部分が見られることがあります。

こうした特有の造作には、素朴な織り環境によって生み出されるもの、また織り人の拘りを窺い知ることが出来るものなどがあります。
そんな昔ながらの手法で作られたからこそ見られる伝統織物の“いろいろ”について、どうぞご覧下さい。

継ぎ目

機械織りや高機での手織りの織物が比較的幅広の織ることが出来るのに対し、織り機の原点とも言え、最もシンプルで原始的な織機であるとされる地機(じばた)によって作られる織物は、最大幅でも70cm幅前後が限度となります。
そのため、腰巻・敷物などの用途で幅広の大きな布が必要な場合は、同柄の織物を複数枚作り、接ぎ合わせることによって大きく仕立てます。
東南アジアでこうして作られる織物の多くは二枚はぎ(二枚接ぎ)ですが、

スンバ島イカットの継ぎ目

中には、三枚はぎ(三枚接ぎ)で作られる物もあります。
この三枚はぎのティモール島の茜染め絣布の腰衣は、そうした接ぎが効果的に活かされた伝統スタイルとなっています。

ティモール島イカットの継ぎ目

エンドボーダー(カバキル)

スンバ島絣布のヒンギー(男性用腰衣/腰巻)にはフリンジの上部にカバキルと呼ばれる特有の帯状のエンドボーダーが織り込まれることが多く、スンバ島絣布の味わいの一つとも言えます。
このエンドボーダーは、スンバ島絣布の装飾性を高めてくれるだけではなく、腰衣・腰巻として使用されるヒンギーを洗濯する際に、フリンジ上部の端から布が解れてこないようにといった実用的な意味合いもあります。

スンバ島イカットのエンドボーダー

上記のように実用的な意味合いが含まれているエンドボーダーですが、それぞれのヒンギーの色合いに合わせて作られたり、中にはエンドボーダーそのものにも文様が織り込まれている物もあり、素敵な風情を醸し出してくれます。

スンバ島イカットのエンドボーダー

裾の装飾糸

スンバ島絣布のヒンギーのエンドボーダーと同様の意味合いで、他の地域でも裾(端)部分に別糸で装飾が施されていることがあります。

フローレス島イカットの裾

中央部の無絣の理由

絣布の中には、布地の中央部分に下の画像のように絣文様の施されていない箇所が見られる物があります。
これは括りの際に張枠の棒が当たる辺りで、この箇所の括りが張枠のために括りが行いにくい事によって生み出されます。
張枠をずらしその箇所を括るなどして無絣の部分が生まれないよう絣布を作っている地域も多いですが、ヌサトゥンガラのイカットの中には、こうした無絣の部分が見られるイカットが多くあります。

ティモール島イカットの中央部

画像の左端に見える枠によって、絣布中央の絣文様のない部分が生まれます。

フローレス島イカットの括り作業

ショール(肩掛け)について

ショール(肩掛け)というと、両肩にふわりと掛ける、首元に巻く・・・などといった使い方を思い出されるかと思います。
しかし、東南アジアでのショール(肩掛け)の使い方は、まさに‘肩に掛ける’といった使い方が多く、私達の日頃のショールの使い方とはちょっと異なってきます。
細身の物はそのままで、幅が太目の物は縦に二つ折りにして使用されます。
腰巻や生活用品として使用されてきた古布よりも、肩掛けの古布に今でも状態の良いままで巡り合うことが出来るのは、こうしたシンプルに肩に掛けるのが主体で、布地に傷みを生じる使用があまりされないことが理由の一つなのかもしれません。

こちらはタイのお祭りでの様子。
シンプルな場合は布をそのまま片方の肩に掛けるスタイルですが、ラオスやタイではこのように脇にも一周りさせるスタイルで身に着けられることも多くあります。

タイのお祭りにて

タイのお祭りにて

東南アジアの伝統的な手織り布は、オートメーション化され品質管理の完璧な環境ではなく、時には子供をあやしながらアジアの民家の軒先で作られたり、こじんまりとした作業場などのんびりとした大らかな環境で作られています。
場合によっては、手紡ぎされた綿で織られた布にはワタの殻の残りが見られたり、括り素材の紐の断片が布に残っていたり、織りの際にふいに紛れ込んだ作り手の髪の毛が一緒に織られていることもあります。
また、微細な多少のネップ(糸の節)・織りむら・染めむらなどが見られることもあります。
しかし、PANDAN TREEでは、それを含めて人々が一枚一枚作り上げる手織り布の持つ味わい・温もりと考えております。
どうぞ、皆さんも手織り布の世界を楽しんで下さい。

スンバ島イカットの作られる村にて

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