染織品の種類(概要)

ヌサテンガラの染織
(インドネシア/ヌサテンガラの織物)

東南アジアでは様々な場所で、実に多様な染織品が生み出されており、個々の持つ風合いもまた味わい深く魅力的なものです。
それぞれの地域においてバリエーション豊かに生み出される染織品には、大きく分けて下記のような種類があります。

■ 絣
■ 浮織り(紋織り)
■ 絞り染め
■ 更紗

こちらのコーナーでは、そうした染織品の概要についてご紹介させて頂きます。

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◆ 絣

スンバ島イカット
(インドネシア/スンバ島絣布・ヒンギー)

「絣」は、糸を括る事によってあらかじめ多色に染め分けて、文様を織り出す平織りの先染め織物です。
一般的には、絣は7〜8世紀頃インドで生まれたと伝えられており、アジャンタ石窟寺院にも絣を纏った人物が見られます。
絣の技術には、

■ 経絣(縦絣)・・・経糸を括って絣模様を織り出す
■ 緯絣(横絣)・・・緯糸を括って絣模様を織り出す
■ 経緯絣・・・経糸と緯糸の双方を括って絣模様を織り出す

があり、東南アジアの絣布としては、インドネシアの「イカット(ikat)」、タイの絹絣「マットミー(mudmee)」などが広く知られており、特に「イカット」という言葉は、今日では広義にアジアでつくられた絣布を表す言葉として、世界的にも使用され始めています。

経絣(縦絣)と緯絣(横絣)は経糸または緯糸のどちらか一方を括って文様を生み出すことから『シングル・イカット』、経緯絣は経糸と緯糸共に括って文様を生み出すことから『ダブル・イカット』とも呼ばれます。

絣の中でも特筆すべき物は、
経緯絣の技を用いたグリンシン(geringsing/インドネシア・バリ島トゥガナン村)、
同じく経緯絣のパトラ(patola/インド・グジャラート州パタン)、
様々な力強い文様(モチーフ)が大判の布面に躍動する経絣ヒンギー(hinggi/インドネシア・スンバ島)
などです。

尚、オンラインショップ「アジアの織物 PANDAN TREE」内の「絣布(Ikat)について」では、より詳細に絣布についての由来から様々に説明致しておりますので、どうぞ参照下さい。

◆ 浮織り(紋織り)

タイ族の浮織り布づくり
(タイ/ナーンのタイ族の村の浮織り布づくり)

「浮織り(紋織り)」は、緯糸または経糸によって文様を浮かせて織り上げる技法で、

■ 緯糸紋織り・・・地緯の他に絵緯(えぬき)を使って布の全幅で緯糸を浮かしながら文様を織り出す
■ 経糸紋織り・・・地組織の経緯糸の他に、紋織り用の経糸を使う
■ 縫い取り織り・・・文様の部分にのみ絵緯を使って文様を織り出す緯糸紋織りの一種ともいえる

があります。

アジア各地の浮紋織りは、

■ ソンケット(songket)・・・インドネシア・マレーシア・ブルネイの緯糸紋織り
■ パヒクン(pahikung)・・・インドネシア・スンバ島の経糸紋織り
■ キット(khit)/ムック(muk)・・・タイ・ラオスの経糸紋織り

また、縫い取り織りは、

■ ブナ(buna)・・・インドネシア・ティモール島
■ チョック/ジョック(chok)・・・タイ・ラオス

などがあります。

◆ 絞り染め

インドネシアの絞り染め
(インドネシア/ジャワ島トゥバンの絞り染め)

「絞り染め」は、布の一部分を絞ったり(巻き締め絞り)、縫ったり(縫い締め絞り)した後に染めを施すことで、円形や波状などの模様を生み出します。

絞り染めは世界各地で古くから行われてきましたが、東南アジアの中ではインドネシアでつくられることが多く、巻き締め絞りは「プランギ(pelangi)」、縫い締め絞りは「トリティック(tritik)」と呼ばれております。
スマトラ島・ジャワ島・バリ島などで主につくられており、かつてはスラウェシ島トラジャでも素朴な中に凛とした力強さが感じられる絞り布がつくられておりましたが、現在では見かけることも少なくなってきました。
また、インド北西部では「ラハリア(laharia)」や、バンダナの語源となった「バンダニ(bandhani)」といった絞り染めの布がつくられており、ターバンやベールとして使用されております。

◆ 更紗

バティックの制作風景
(インドネシア/ジャワ島のバティックづくり)

「更紗」はインド起源の染織品で、あらかじめつくられた綿や絹の平織り布に蝋や糊で線描き(防染)をして模様を描いたり、木版や金属版によって模様をプリントするなど、様々な手法で模様を表した染め物です。

アジアでは、先に述べたインドの「インド更紗」の他、「ペルシャ更紗(ガラムカール)」「中国更紗(印花布)」「シャム更紗」「和更紗」などがあります。
また、広く織物文化が発達し、様々な手織物がつくられているインドネシアにおいて、ジャワ島では他地域と異なり“ろうけつ染め”であるバティック(batik)が主体の染織文化が花開き、「ジャワ更紗」と呼ばれ世界的に高い人気を誇っております。
その他、モン族の民族衣装に使用される藍染めのろうけつ布なども広く知られております。

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