織物づくりの工程
こちらのコーナーでは、インドネシアのスンバ島絣布を例に、織物の出来上がるまでをご紹介します。
様々な工程を経て一枚の絣布がつくられますが、そうした工程を順を追って並べております。
尚、当オンライン・ショップPANDAN TREE内の「絣布のつくり方」では、フローレス島での絣布づくりの風景をご紹介しておりますので、どうぞ併せてご覧下さい。
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@紡ぎ
現在では、あらかじめ機械によってつくられた市販の紡績糸を手に入れて織物をつくるというスタイルが大部分となりましたが、そんな中でも手紡ぎの糸をつくり、昔ながらの織物づくりを続けている場合もあります。
スンバ島では村の王(長)のために特別につくられる絣布には手紡ぎ綿を使用する伝統があったために、現在でも一部の絣布において手紡ぎ綿製の物を時折見かけます。
A下書き
糸の準備が出来た後は、文様(モチーフ)をつくります。
シンプルな文様や、定番とも言えるつくり慣れた文様の場合は、下の画像のように下書きなしに長年の経験やイマジネーションによって括られていきます。
しかし、凝った文様を織り込む際などは、直に括り始めることは難しいため、下の画像のように下書きを施した後に括りの作業に入ります。
細かな文様の躍動するスンバ島絣布は、このようにして作られていきます。
B括り
次に括りの作業に入ります。
現在では東南アジアの多くの地域の手織物において、括りには梱包時などに使用されるビニールテープが利用されるようになりましたが、伝統的な織物づくりに拘ったエリアでは現在でも椰子の葉などが使われます。
ここスンバ島でも他エリアや他国と同様にビニールテープの使用も増えつつありますが、一部地域においては昔ながらの椰子の葉を使用した括りが現在も行われています。
椰子の葉などの場合は、水につけても天然繊維であるために一緒に伸縮し、季節の水温の変化にも緩むことなく絣模様がより奇麗に仕上がるという良点があります。
こうした点が、拘りを持ったイカットの作り手さん達が今も天然繊維で括りを行う理由です。
C染め
次は染めの作業に入ります。
複数色で染める場合は、藍から始まり次が赤といったふうに進んでいきますが、各色それぞれの染めの回数も季節や作り手さんの拘りにより変わります。
鮮やかな彩りを表現するために丁寧に染めを繰り返す作り手さんの中には、通常の倍以上の染め回数を繰り返す方もいるそうです。
D整経
全ての染め作業が終わり、次は織り始める前の整経を行います。
括られた紐を解き、木枠に染め上げた経糸を張って、織った際に文様が崩れないように整えます。
一見、地味な作業ですが、絵画のように織り込まれた文様が魅力のスンバ島絣布の中では、絣を綺麗に仕上げるための重要な工程です。
E織り
そして、整経された糸を模様がずれないように織機に掛け、最終段階の織り作業に入ります。
スンバ島絣布の場合は、写真のようにシンプルな腰機(いざり機)を使用してつくられます。
後は、ボーダーの帯(カバキル)やフリンジを仕上げるなどしてスンバ島絣布の完成です。
それぞれの伝統を踏まえた工程を経て、長い時間をかけてつくられる手織り布。
一枚のスンバ島絣布が織り上がるまでには、それぞれのつくり手の拘りや熟練度などにより差はありますが、大体10ヶ月〜1年前後かかるそうです。
中には、島で採れた綿による手紡ぎ綿の絣布をつくるために、綿集めの段階で2年を費やす事もあるそうです。
どうぞ皆様も、織り人の伝統の技が生きた絣布の世界をお楽しみ下さい。
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